達成感が生まれた日
小学校5年生の頃、友達とサイクリングに行きました
海を見に行こうなんてちょっとした思いつきだったんですけど
10kmか15kmほどの短い距離ではありましたが、10歳のボクには冒険です
変速機もついていない子供用の自転車で漕ぎ出しました
ボクの父親は運転免許を持っていなかったので、ボクの活動範囲は本当に半径5kmくらいしかありませんでした
町中を過ぎるとダラダラとした坂道が現れました
山のほうに続く初めて通る道です
友達が言うにはこの坂を登り切ったらあとは港まで下るだけだと
ボクはそれまで自分で考えて最後までやりきった事がなかったと思います
敢えてあるとするなら「飛ぶ教室」という本を図書館で借りて最後まで読んだこと
それくらい自分の考えに基づいた行動は、いつでも止められる軽い事柄だったのです
だからこの時も「辛くなったらいつでもUターンして帰ることが出来る」と思っていました
坂がだんだんきつくなってきます
友達の自転車は最新の5段変速車です。ギアを切り変えてスイスイ登って行きます
「嫌だな」
一瞬あたまをよぎりました
でも、海を見たいと提案したのはボクだったし5段変速にも負けたくなかった
途中からは必死の形相でペダルを踏み下ろします
しだいに5段変速の友達もきつくなってきました
もう道路の足をついて休憩しようかと思った時、峠のてっぺんが見えたのです
二人で励まし合って頂きにたどり着きました
そこでボクらの目に飛び込んできたのが青くキラキラと輝いた海だったのです
そして峠から見える広い海のほうから風が吹いてきました
汗だくの髪と髪の間に涼しい風が吹き抜けました
この時、ボクは生まれて初めて達成感を味わいました
だぶん脳内にはドーパミンやエンドルフィンやその他の体内麻薬物質がドバドバだったに違いありません
自分で考えて自分で実行する。そして目標を達成する
この時の強烈な快感を脳みそが覚えているのです
知能が高くなかったので、それをうまく活用することは出来ませんでしたが、ボクのその後の人生を面白くさせてくれました