ボクの定年

還暦オーバー!今日もチャレンジ!

初老のゴルフ

1番HOLE 360y パー4

左右にOB杭は無い。緩やかな下り傾斜で見晴らしが良い

山の中のコースだが広々と感じる。初夏の緑が力強い

ただ、左側180~190y付近にある大きなフェアウェイバンカーが気になる

 

今日は、高校時代の同級生の吉田と二人で廻る

彼は今、ハローワークに通う無職の身だ

もっとも来月には再就職が出来そうとのことで、表情は明るい

甲子園を目指した元高校球児だ

楽しいゴルフになりそうだ

 

ジャンケンをしてボクが先にティーグラウンドに立った

最近は左側に曲がるチーピンに悩んでいる

200y先のフェアウェイ右側ギリギリに照準を定め、アドレスに入る

まずはちゃんと当たってくれ。

まるでお祈りの様な3秒くらいの沈黙の後、上体を捻ってバックスィングに入った

あとは何も考えずに振り切るだけだ。たとえ結果が悪くても振り切らないと後悔が残る

キィン

高い金属音とともに小さな白球が舞い上がる

初め右側に飛んでいったが、次第に大きな弧を描いて左方向に進路を変える

ゴルフで無ければ、美しい放物線だと目を細めるかも知れない

だけど左側にはバンカーが口を開いて待っている

そして吸い込まれるようにバンカーのど真ん中に落ちていった

あっ

おもわず声が出た

それと同時に額に爽やかな風を感じた

アゲンストだったんだ。

ボクは振り返りざまに吉田に言った

でも言ってから後悔した

吉田がボクに分かるように含み笑いをしたからだ

このくらいの逆風が吹いていようがいまいが、ボクらのゴルフには大きな影響は無い

単なるチーピンだと言いたげだった

 

ボクと入れ替わりに吉田がティーグラウンドに立つ

ボクらの高校は進学校で野球強豪校だった

あと一つ勝てば甲子園だった

身長は168cmと小柄で身体能力はそれほど高くなかったけれど、すごく器用だった

守備位置はサードで反射神経とグラブ捌きは抜群だった

落ち着いた表情でティーアップし、ボクに向かってお願いしますと挨拶した

まだ含み笑いしたままだった

やべぇ挨拶するの忘れてた

ボクは慌てて前傾角45°でお願いしますと返した

吉田は2回素振りをした

上体の捻転が少なく手振りに見えた。スィング後にふらついてもいる

当たらないな、と感じた

心配をよそに吉岡はヒョイとドライバーを振り上げスムーズに振り下ろした

ガキィン

ヒールに当たったボールは想定よりもずいぶん高く打ち出され、160y付近に落ちた

でもフェアウェイのど真ん中だ

テンプラ~

吉田は屈託無く照れ笑いしながら叫んだ

 

さあ!楽しいゴルフが始まった

ボクらは子供のように小走りでカートに乗り込み、フェアウェイに向かってアクセルを踏んだ

トゥビーコンテニュー