還暦の心を分析してみた。
人間の心は変化する。仕方がない。
この人こそはと結婚して、今となっては同類相憐れむの境地である。
これぞ天職だとバリバリ仕事をしていたが、もう情熱が残っていない。
心の変化は今までも幾度となく経験してきたが、還暦を過ぎた最近の心理状態は揺れに揺れている。
なかなか複雑なのだが、あえて単純に表現すると「余裕がなく慌てている」なのだ。
まあまあお恥ずかしい。61歳にもなって慌てている初老の男の姿は滑稽に見えるだろう。
今週中にやらなければいけない事があるわけでもなく、借金取りが玄関を叩くわけでもなく、試験の期日が近づいているわけでもない。
だけど、落ち着かない。何をやっても不安が背中にこびりついているようだ。
終わってしまうのか?
大した感動もなく人生というドラマの幕が下りるかもしれない。
そんな心境のようだ。
いや、もう少し面白くできるだろう。もう一波乱、大どんでん返しを作ってからエンドロールを迎えたい。
だけど、ガソリンが残っていない。
ガツンとアクセルを踏み込んだら、それっきりエンジンがストップしそうで怖い。
かといってそのまま尻すぼみにエネルギーをケチっていたら車速はドンドン落ちていく。
目の前の坂道を越えたら今度こそ青い海が見えるかもしれない。
他人を許す余裕がない。
若い時は、まだ何度でもやり直すことができるだろうという自信と余裕があった。
もう何回もやり直すことはできない。
8割がた完成した作りかけのジグソーパズルを壊されたら、もう無理だ。
壊してしまう可能性のある人たちを遠ざける。こっち来るなと吠え立てる。
そんな自分を初めて知って狼狽える。慌ててしまって取り繕う。
いままで一生懸命積み上げたものが、ある時急に陳腐に見えてしまう。
あの時の燃えるような情熱は、実は薄っぺらい戯言だったと感づいていた。
微笑ましくいじらしいだけの理想だったと気が付く。
人を支えているつもりで得意満面に歩いてきたが、実は逆に人から支えられて生きてきた。
恥かしくて堪らなくなり顔をどこを向けたら良いのかもわからずに、とりあえずばれない様に仏頂面をして生きている。
このまま死ぬまでオドオドしたままなんてとても耐えられない。
今までの自分を脱ぎ捨てたいけど捨てれない。
分析をしたら、けっこうな勢いで病んでいた。