ボクの定年

還暦オーバー!今日もチャレンジ!

小さな冒険者 未知の世界へ踏み出す勇気はもしかして強迫観念から?

いきなりちいさなムカデが机の上を這った。そうとうビックリした。 反射的にスリッパでたたき殺していた。刺されたわけではないのでムカデに罪はないのにね。いつも不思議に思うことがある。どうして一匹だけで遠い場所まで移動するのか?生まれたところにずっといれば良いのに。

 

 人間社会で考えてみると、皆がずっと生まれたところに住み続けるはずはない。大学入学や就職で地元を離れる人が多いだろう。また、会社に入っても色んな理由で転職することもある。数的に言うと圧倒的に同じ場所で生き続ける方が少ない。

新しい可能性を見つけるために場所を離れるけど、裏を返せば今いる場所がだんだん居心地が悪くなるからではないだろうか?思春期に親や社会に反抗する気持ちはその場から離れたい原動力になっているのだろう。もしかすると未知の世界へ踏み出す勇気は強迫観念から生まれてくるのかもしれない。このままこの場所に居続けるのは危険だと心が叫んでいるように思える。

 

子供の自立心が旅立ちを促すことは想像しやすい。しかし大きな組織でも同じような事は起こる。大きな組織は人間関係も複雑になるからだ。よく、会社は選べるけど上司を選ぶことはできないと聞いた方もいるだろう。多種多様な人間がいて色んな考えを持っていて、それを仕事という括りで同じ思想にしようなんて土台ムリな話だ。それより毎年毎年、売り上げを上げ続けることもまたムリだ。それでも組織は売り上げを要求する。組織が生き残るにはそれしか方法がないからだ。人間関係がぎくしゃくしないわけがない。

 

 多少のギクシャクがあっても、嫌な上司がいても、大抵の人間はその職場にとどまる。その方がトータルで見ると自分に有利と判断するからだ。本当にそうかは分からない。さっさと旅立った方が良い場合だってある。そうとう大きな出来事がない限り、人間は旅立てない。少数の冒険者以外は。新しい世界への憧れよりもここにいると自分が自分でいられない。きっとマズイことになるという強迫観念から突き動かされるのだろう。

残る人間もしがらみを受容して生きるしかない。はみ出した人間は荒野を目指す以外に道はなくなる。自らの責任の下で風雨にさらされながら安住の地を求めて放浪うことになる。

 

ちいさなムカデくんは残念ながら彼の桃源郷にはたどり着けなかった。

初老の人間よってに夢を閉ざされた。