老人の権利
日本は国民の権利が尊重された先進国ですので、老人の権利もまたしっかりと尊重されています。61歳になるボクは老人なのかまだまだ壮年なのかわかりませんが、そろそろガタがきているポンコツです。しかし今のところボクの権利が侵害されてる気配はありません。
体力も知力も判断力も運動能力も低下してくれば、いよいよ権利がはく奪され始めます。いえいえ国家や自治体からではなくて家族や近隣住民からの圧力です。今まで多くのそんな高齢者の生活を見てきました。それまで散々親の車に乗せてもらって部活や塾や時には家族で行楽にと、運転手としてこき使ってきたのに少し危なっかしくなったという理由で運転免許を返納せよとの子供からの通告を受けます。それじゃあ子供たちが高齢になった親の運転手をするのかと言えば忙しいから出来ないと言う。仕方なく腰の曲がった身体に鞭打って、近くのスーパーまで歩いて買い物です。白菜など重い野菜を持つことになる帰り道はつらいです。台所のコンロはすべてIHにしなさいと改装費用を出すこともなく注文をつける。たしかに2度3度とナベを焦がしたりしたかも知れない。お隣さんが火事になるのを怖がっているのも知っている。もう中華鍋でチンジャオロースは作れない。
コロナ禍の中で特別養護老人ホームに入所するということは刑務所に入るのと大きく違いません。集団感染防止の観点から面会は遮断され、密にならないように施設内の交流にも制限が設定され、冬が来るというのに強制的に換気が行われます。外出なんてもってのほか、個人の意見は笑顔の施設長に握りつぶされます。自宅がどんな状況になっているのか全くわかりません。庭の草むしりは出来ているのか?月に1度でも部屋に風を通しているのか?人生をかけてやっとの思いで築いた小さな城は、今はもう家族のお荷物になっているのか?あんまりだ。俺の人生は何だったのか?
ボクの事ではありません。しかし多くのこのような高齢者を見てきました。ボクの身に降りかかっても何ら不思議ではありません。そしてあなたにも。