無人販売と利用者保護
ボクの義理の妹は嫁の実家で家業を手伝っています。いや、義理の両親が妹を手伝っている?どちらでも良いのですが、田舎なもんだから野菜とかも作って、無人販売所に納品しています。
先日、その義理の妹がボクの家に急に現れて、私の話を聞いてくれ、5分だけでもいいからとクレイジーケンバンドみたいにまくし立てられた。無人販売所で商品の野菜が盗まれるそうだ。手塩にかけた商品を簡単に盗むなんて人間のクズだとばかりに、そりゃあすごい剣幕で愚痴られた。でもボクは、無人販売所の野菜を盗まなければならない人の事情に思いを馳せた。
ボクら介護業界では、ご利用者やご家族からの理不尽な行動や言動に苦しんでいる人も多いようです。精神疾患や認知症を患う方もいらっしゃいますので、当然のように暴言を吐かれたり、ひどいケースになるとセクハラや噛みつかれる事もあると聞いています。ほとんどの施設の管理者や責任者は、そのことについてご利用者を保護する立場をとるようです。そして勝手に暴れて転倒した場合でも、ご家族からは強く抗議されたり損害賠償を求められることも当たり前となっています。
日本という国の良い文化なのか、「善意はあって当たり前、善意がない人は悪人」という考え方があるのでしょう。ボクにはそういう考え方が良いのかどうかわかりません。もし良い事だとしたら、かえって息苦しい世の中になるのではないかと思います。善い人であらねばならない。いつも他人の価値判断で忖度し、他人の目を気にしながら生きて行かなければなりません。自分の判断と他人の判断に誤差が出る時もあるでしょう。
少なくとも善意とは当たり前(普通)ではありません。善意 ― 普通 ― 悪意ですから。
いくら無人販売所でも商品を盗む事は悪い事です。しかし、無人の場所に商品を放置する行為は、もし盗難にあっても文句は言わない。という暗黙の了解の上で成り立っているシステムではないでしょうか。
家族を施設に預けるのにも、家庭ごとのいろいろな事情があっての事と思います。家庭ではどうしても看ることが困難になって施設に預ける事になったと思います。
公的な保険を使うのであれば権利を主張されるのも間違いではありません。しかし、悪意があっての事故でないなら、ただ、従事者を責めるのは納得できません。悪意でないのなら、普通か善意です。それにお互い人間です。上手くいかない事もあるだろういう前提に立つべきです。
誠意が感じられないから謝罪せよなどと、最近では耳馴染みになったフレーズですが、それは悪意があった場合にのみ使ってほしいと思います。どうしても善意の塊であってほしいのであれば、ボクもあなたに善意を要求します。ボクの価値判断による善意です。それも誠意を込めることをあわせて要求します。
そんな世の中は嫌ですよね。時々は損する事もあるでしょう。自分が損する番が来ちゃったなと考えるほうが、よっぽど楽でいられると思います。どうです?義理の妹よ。
ところで、蕎麦打ちはなんとかご利用者さんに提供できましたが、失敗作でした。来年こそはお店の物と見間違うような立派なお蕎麦を打つぞ。
それでは、また明日。