ボクの定年

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追悼 中村医師 ~ あなたの前では僕らはみんな中途半端

NGOペシャワール会代表 中村哲医師が亡くなった。

 

彼は理念や信条を貫き通した人間だったと思う。

 

僕らは口では綺麗な言葉を使う。

 

人の心に刺さる言葉は吐けるけど、人の心に刺さる行動は難しい。僕はできない。

 

どこかに打算があり、最終的に、自分に有利かどうかを計算している。そうでないと生きていけないからだ。いや、もしかすると、生きていけないと思わされているのかもしれない。

自分が生きることが最優先で、それを誰も咎めない。咎める事ができない。そんな世の中に、僕らは生きている。

 

中村医師は、違う。

 

それが世界のすべてではないと日本を飛び出した。

必要であれば、自分の一番のストロングポイントさえ、軽々と投げ捨てる。医療よりも農業だと言いきり、自ら灌漑作業に没頭した。

 

なぜ、そこまで自分を犠牲にできるのか?彼は、そこにうずくまる人がいれば、大丈夫かと声をかける、と答えている。僕には理解する事ができない。とてつもない自己嫌悪に陥るけど、彼には嘘はつけない。

 

自分の安全が確保できる場面でなら、僕もそうする事ができるだろう。しかし、銃弾が飛び交う紛争地帯で、大丈夫ですかと話せない。人の事より自分の事を優先してしまう。

 

情けない。医療・福祉の世界で30年間も生きてきたのに、彼の前では一言たりとも話をする事ができないだろう。僕らも誠実に仕事をしてきた。やってきたことに誇りもある。しかし、彼の前では、何もかもが中途半端だ。自分が発した言葉を、これっぽっちも実現できていない。僕らはそういう人間だ。

 

僕らは、彼を忘れてはいけない。そして、僕らが中途半端であることを忘れてはいけない。中途半端な人間同士が、助け合って、慰めあって生きて行けば良い。できる範囲で精一杯やろう。できる範囲を少しでも拡げよう。