運動の実施基準(運動してもいいか迷った時)
60歳以上の行動は、自分で判断して自分で実施するのが良いと思います。自己責任です。そうは言っても、正確に判断できる知識が必要です。すこし古くなっている判断基準ではありますが、今もリハビリテーションの世界では中心的なものをご紹介します。
アンダーソン・土肥の基準
Ⅰ.運動を行わないほうがよい場合
1)安静時脈拍数 120/分以上
2)拡張期血圧 120以上
3)収縮期血圧 200以上
4)労作性狭心症を現在有するもの
5)新鮮心筋梗塞1ヶ月以内のもの
6)うっ血性心不全の所見の明らかなもの
7)心房細動以外の著しい不整脈
8)運動前すでに動悸、息切れのあるもの
Ⅱ.途中で運動を中止する場合
1)運動中、中等度の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛などが出現した場合
2)運動中、脈拍が140/分を越えた場合
3)運動中、1分間10個以上の期外収縮が出現するか、または頻脈性不整脈(心房細動、上室性または心室性頻脈など)あるいは徐脈が出現した場合
4)運動中、収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合
Ⅲ.次の場合は運動を一時中止し、回復を待って再開する
1)脈拍数が運動前の30%を超えた場合.ただし,2分間の安静で10%以下に戻らぬ場合は、以後の運動は中止するかまたは極めて軽労作のものにきりかえる
2)脈拍数が120/分を越えた場合
3)1分間に10回以下の期外収縮が出現した場合
4)軽い動悸、息切れを訴えた場合
軽く、解説をします。まず、三つの場合に分けてあります。
Ⅰ初めから運動を取り止めたほうがいい場合と、Ⅱ運動を行っている途中で中止する場合、そしてⅢいったん中止して、基準を満たす回復があった場合に再開する場合。
この基準が、何とか運動を続ける方向で考えられているのが分かります。
血圧の事が書いてあります。
血圧に関する誤解は多くの人で見られます。それは血圧は一定ではないという事です。だから収縮期血圧(最高血圧)が200mm/Hgというびっくりするような数値も珍しくないのです。若くて血管壁が柔軟な人は230mm/Hgでも問題ない場合もあるでしょう。脈拍についても同じことが言えます。
次に、不整脈について記述がありますが、不規則な心臓の動きのパターンは幾種類もあり、医師の診断がある人は、どのような種類の不整脈化を確認する必要があるでしょう。ちなみに僕は軽い心房細動を持っています。だから脈拍数は常に測定していますし、血液サラサラ成分の多い食事を心がけています。
不整脈が重篤化すると心筋梗塞や脳梗塞につながる可能性が高くなります。
軽労作とは、言葉自体が古臭いのですが、以前は運動の強度を労働の強度で測っていたらしい(笑)運動強度はMETsやV°O2(最大酸素摂取量)で表されます。ここでは専門的な指標は使わず、軽い運動と言い換えて問題ないと思います。
以上、簡単な解説をしましたが、大事なことは、上記の基準を知ったうえで、自分の中に基準を作って中止や再開を判断するという事でしょう。勘や気分に頼った判断では、心筋梗塞や脳梗塞など、後遺症を伴う発作を引き起こした時に、ひどく後悔する事になります。